エクソソームを介した運動効果の研究(PNAS)

研究生活 論文紹介
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高負荷インターバルトレーニング、通称HIITは短時間で効率的に体脂肪燃焼、ダイエット効果があるとして知られる。激しい運動を繰り返すことのカロリー消費は個人としても納得だが何よりしんどい。部活の補強で一時期タバタ式トレーニングが取り入れられるなどブームもあったがこれに通ずるものがあるのだろうか。

運動の効果は筋肉組織の代謝変動だけでなく全身の組織においてその代謝改善効果が見られることが特徴である。様々な生理活性分子マイオカインが骨格筋から分泌されて多臓器で機能することが知られているが多面的な制御を可能とする細胞外小胞、エクソソームなどを介した制御メカニズムは未だ未知のところが多い。
なぜ細胞外小胞の効果が解明されていないのかというとその解析の難しさにある。特にin vivoにおいては全細胞が分泌する小胞の混合物であり、そんなヘテロな集団の平均の変動を確認してもどの臓器由来なのかどの核酸とタンパク質が重要なのかなど深堀りすることが難しい。
先日骨格筋由来のエクソソームに含まれるmiRNAが運動によって変動し、肝臓で機能を発揮するという論文がPNASに掲載された。
Castaño, Carlos, et al. “Delivery of muscle-derived exosomal miRNAs induced by HIIT improves insulin sensitivity through down-regulation of hepatic FoxO1 in mice.” Proceedings of the National Academy of Sciences (2020).
彼らは始めにHIITによってマウスの代謝改善効果を確認したあと、運動したマウスの血液由来の小胞を別のマウスに注射することでそのマウスが運動したかのように代謝改善を誘導できることを示した次に血液中のエクソソーム様小胞に含まれるmiRNAのうちmir-133a/bが上昇することを発見した。
重要なのはそのmirがどの臓器由来の小胞なのかを明らかにすることだが、彼らは各臓器の間質に含まれるような小胞を単離することによってmir133の上昇が骨格筋由来の小胞であることを示している。
最後にmir133の結合候補としてfoxOを同定し、人工のEVやvitroの系を通じてそのダウンレギュレーションを確認している。これが様々な下流遺伝子を制御することでインスリン感受性を向上させるわけである。
HIITによって肝機能が向上するという帰着点はそりゃそうかという結論ではあるが、そのメカニズムの一端を明らかにし、特にヘテロな情報集団の中から特定臓器由来の小胞機能を特定しうる方法を用いたのは新しく価値があると思う。今後同じような方法で各臓器由来の小胞機能を同定するような論文が出てくるだろう。
しかしながら臓器間質に含まれる小胞はあくまで狙った臓器細胞由来の小胞が相対的に多くなるだけで多細胞由来小胞の影響を排除できたわけではないしツッコミどころも沢山ある。血流に乗ることも確かではないし、それが特定の臓器に運ばれるメカニズムは静脈注射の結果とは異なる可能性が高い。
また今回のmir133は運動時に骨格筋での発現が著しく上昇している一方で小胞に含まれる量の上昇はそれほどである。つまり骨格筋での機能がメインでありそれ以外の臓器にもたらされる変化は微小であると言える。オミクス解析をしていないので調べる対象をもっと幅広くしていけばおそらく今回同定したmir以上に大きな機能を持つ生理活性因子が見つかると思う。
価値ある研究だとは思ったが、結論が当たり前だと、論文を読んでいての驚きや面白さが半減してしまうなあと思ってしまった。
Reference
Castaño, Carlos, et al. “Delivery of muscle-derived exosomal miRNAs induced by HIIT improves insulin sensitivity through down-regulation of hepatic FoxO1 in mice.” Proceedings of the National Academy of Sciences (2020).

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