クレアチン摂取で肥満予防 (Nature metabolism)

研究生活 論文紹介
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陸上競技の世界では試合期になるとクレアチンの摂取をする選手が多くなる。これはクレアチンがATPといったエネルギー因子の産生に最も速やかに使われるため、無酸素系では最大パワー出力が高まるなどと言われている。

今日はそんなクレアチンが肥満予防になる可能性を示唆した論文でクレアチンについての知られざる機能を認識した。タイトルはAblation of adipocyte creatine transport impairs thermogenesis and causes diet-induced obesity.(脂肪細胞へのクレアチンの取り込みが損なわれると熱産生能の低下と食事誘発性肥満を引き起こす)である。

肥満は2型糖尿病、心血管障害、がんなどの合併症を引き起こしやすくする原因因子として知られているものの、高カロリー食摂取による消費カロリーオーバーの傾向がそう簡単に変わるとは思えない。肥満患者の特徴として体内の熱産生能が低下するという特徴が知られている。また、深部体温などは肥満患者において低い傾向が知られている。

熱産生は脂肪細胞で行われるものと、脂肪細胞外の組織で行われるものとある。褐色脂肪細胞における熱産生はよく知られており、多くのミトコンドリアを持ちその内膜に局在するUCP1と呼ばれる熱産生タンパク質によってミトコンドリア内膜を隔てて形成されたプロトン濃度勾配をATP合成ではなく熱産生にして消費する。この時のシグナルとなるのは副交感神経末端から放出されるノルアドレナリンであり、褐色脂肪細胞に局在するβ3アドレナリン受容体を介して熱産生を引き起こすためのシグナルを受容する。

論文の主役であるクレアチンは一般的にはミトコンドリアにおけるATP産生を増強する代謝物である。骨格筋にとって重要なエネルギー貯蔵物質であり、ADPからの無酸素的なATPの生成に使われる。これまでの研究で既に内在性のクレアチン量を脂肪細胞特異的に低下させると、アドレナリン誘導性熱産生が弱まり、深部体温の現象が見られることが知られていたようだ。しかしながら血中クレアチンの脂肪細胞への取り込みが直接熱産生に寄与するかどうかは知られていなかった。

本研究では細胞膜にあるクレアチントランスポーター(CrT)を脂肪細胞特異的にノックアウトすることで脂肪細胞特異的にクレアチン濃度及びリン酸かクレアチンレベルを低下させた。この時全身性のエネルギー消費量が低下することを確認した。KOマウスは寒冷暴露による不耐性の表現系を示し、High-fat dietによる肥満がより大きく誘導された。
熱産生に対するメカニズムについては、high-fat dietとクレアチンの共摂食によってβ3アドレナリン依存的に全身のエネルギー消費を更新することを示し、脂肪細胞におけるクレアチンが食事/β3-アドレナリン誘導性の熱産生を弱めることを示唆している。
最後には、ヒトにおいても、脂肪細胞におけるCRTの発現が体重やインスリン感受性と関連があることが示されている。血中クレアチンを脂肪細胞に効率よく取り込む介入ができれば、肥満関連の代謝障害の改善を誘導できるかもしれないというSuggestionだ。

背景と概要を述べたところで研究の要点について記載する。

研究結果の要点

  • 脂肪細胞特異的なクレアチントランスポーターの欠損は脂肪細胞におけるクレアチン量を低下させる。
  • 脂肪細胞特異的CrT KOマウスはエネルギー消費が弱まる。
  • クレアチン摂食によって高脂肪食を摂取にもかかわらずエネルギー消費量が高められる。
  • 脂肪細胞特異的CrT KOマウスは高脂肪食摂食によって肥満になりやすい。
  • 脂肪細胞特異的CrT KOマウスはBATとSQにおいてKininogenの発現量が増加している。
  • 脂肪細胞特異的CrT KOマウスは寒冷暴露に適応するためKng1を介した体重増加を引き起こす。
  • ヒト脂肪細胞のCRTレベルはその人のBMI及びインスリン感受性と相関がある。

所感
個人的にクレアチンを摂取した時に体が引き締まる感覚はある(プラシーボ効果であると思っていた)。もし本当なら、どれくらいの量を摂取すれば恒常的に健康効果が引き起こされるのか興味がある。
また、運動などを続けたりしていけば、クレアチントランスポーターの活性は高くなっていくのか、介入手段があるのかについてはさらに研究を進めてほしい。
クレアチン=スポーツ選手がとるもの という認識が少し変わった良い論文だった。

 

Reference
Kazak, L., Rahbani, J.F., Samborska, B. et al. Ablation of adipocyte creatine transport impairs thermogenesis and causes diet-induced obesity. Nat Metab 1, 360–370 (2019). https://doi.org/10.1038/s42255-019-0035-x

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