ヘモグロビンの起源について深く考えてみた

論文紹介
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生き物がヘモグロビンで酸素を授受するようになったのはいつから?そしてその理由は?

こんな質問を友人から受けたのでレビュー記事などを読んでまとめた内容を投稿します。

Summary

  1. 初めてグロビン遺伝子が見つかったのは約800万年前、400万年前には現在のヘモグロビンコード遺伝子(HBA1, HBA2)が誕生したと考えられる。
  2. ヘモグロビンの酸素運搬能は植物のヘム酵素からの進化が要因である説が有力。
  3. はじめにヘモグロビンが構成されてからも長い年月をかけて構造的なヘモグロビンタンパクの進化が行われてきた。

 

  1. 初めてグロビン遺伝子が見つかったのは約8億年前、400万年前には現在のヘモグロビンコード遺伝子(HBA1, HBA2)が誕生したと考えられる。

ヘモグロビンやミオグロビンの祖先ともいえる、最も遠い関係にあるグロビンとしてニューログロビンが挙げられる。この遺伝子は8億年以上前(脊椎動物と無脊椎動物が分岐する前)から存在していたことがわかっています。そこから約400万年前には上図に示される5つのヘム結合型のグロビン遺伝子へと多様化していることが報告されている。現在の脊椎動物におけるヘモグロビンは2つのα-globinとb-globinmからできるヘテロ4量体であり、他の論文においても450万年前にこれらの遺伝子が見られ、ヘモグロビンの誕生はこの時期であると考えられる。

 

  1. ヘモグロビンの酸素運搬能は植物のヘム酵素からの進化が要因である説が有力。

上述したように共通したグロビン遺伝子が複数のグロビン遺伝子群へと多様化していることが推測されるものの、これが脊椎動物の進化の過程においてどのように異なる染色体に移動したり、協調的な制御機構が生じたりするのか、そのモデルは非常に複雑である。ヘモグロビンの進化については構造が類似している光合成に関与するシトクロムや酸化を触媒するヘムタンパクとの関係性が興味深い。遠い昔、植物が光合成をすることによって酸素が発生した。酸素は細胞構成要素にダメージを与えることを考えると当初はヘムタンパクはこの活性種を細胞から守るために相互作用して防御機構として働いていたのではないか。次第にエネルギーを得るための電子伝達系(呼吸鎖とも呼ばれる)が発達して電子受容として酸素の機能性が認識されると、ヘムタンパク質は次第に電子伝達物質として機能し始めこれが現代のシトクロムにつながったのではないだろうか。この後さらに遺伝子の重複や分岐を繰り返すことによって他の酸化還元反応においても関与するようになっていく。こうして進化に沿って生体反応における酸素の需要が増していきヘムタンパク質は生体の希少な酸素を回収して呼吸鎖や各反応系へと供給する機能を果たすようになった。こうして最終的には外界の酸素を取り込み、各臓器へと輸送する機能を持つヘモグロビンやミオグロビンが誕生したと考えられる。

  1. はじめにヘモグロビンが構成されてからも長い年月をかけてヘモグロビンタンパク構造の進化が行われてきた。

改めてヘモグロビン分子の構造について説明すると、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のサブユニットが構成単位で、αとβそれぞれが2つずつで合計4個から成る四量体構造(α2β2)をしている。この4個のサブユニットのヘム鉄原子に一つずつ酸素分子が結合する。ヘモグロビンの最大の特徴は、サブユニットに酸素が結合すれば、他のサブユニットにも酸素が結合しやすくなることである(逆に一つのサブユニットから酸素が解離すれば、他のサブユニットの酸素も解離しやすくなる)。これをタンパク質の「協同性」と言われる。昨年Nature誌に投稿された論文ではヘモグロビンが現在のα2β2の4量体をなぜ取るようになったのかについて報告されている。この論文では先祖型のアミノ酸配列を推定してそこから4次構造を再構成している。再構成されたαβそれぞれのグロビンタンパクの先祖型は2量体を作れるが4量体は作れない。またミオグロビン先祖型はモノマーしか形成できないことも示されており、進化の過程に置いてモノマー→ダイマー→テトラマーという機能的進化が起きていることがしめされている。この再構成された先祖型ヘモグロビンに対して突然変異をどのように入れると酸素結合能を落としてより大きな複合体を作れるようになるのかが示されている。すなはち、進化に応じてより酸素を効率的に、結合能の最適化ができるようにヘモグロビンの1次構造および4次構造における変化が起きていることが示されおり非常に興味深い。

Reference

  • Hardison RC. Evolution of hemoglobin and its genes. Cold Spring Harb Perspect Med. 2012;2(12):a011627. Published 2012 Dec 1. doi:10.1101/cshperspect.a011627
  • Hardison, Ross. “Hemoglobins from bacteria to man: evolution of different patterns of gene expression.” Journal of Experimental Biology8 (1998): 1099-1117.
  • Pillai, Arvind S., et al. “Origin of complexity in haemoglobin evolution.” Nature(2020): 1-6.

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