非侵略的なイメージング技術の開発に向けて

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イメージング技術に非常に興味があるここ最近である。

様々な蛍光を発する分子マーカーを用いる細胞追跡技術は、生物学を大きく変える技術としてノーベル賞に輝いたりしているものの、光を使う限り、どうしても透過性の問題がつきまとう。世界には光学ではない、他の方法で検出される分子標的を開発する努力が行われていると思うが、なかなか実用可能な標識は出てこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

個人的に最も有力ではないかと思うのはCaltechのM.Shapiroさんのラボで研究されているGas vesicleを用いた超音波によるイメージング技術である。水性バクテリアの中には、表面に浮くため空気を貯めるタンパク質を持つものがあり、このタンパク質が形成する空気の小胞、gas vesicleを超音波で検出する可能性を着想した。2018年に大腸菌で (Nature)、2019年には哺乳類で(Science)細胞内にGas vesicleを発現させる遺伝子、オペロンを選定している。この時には、超音波を当ててgas vesicleを潰してしまい、最初当てた時の画像(空気を検出している)と、vesecleが潰れた後の画像を引き算して、vescile を浮き上がらせる方法を用いてイメージングをしているが、2021年のBiorxivでは複数のバクテリアから最適なGas vesicle発現遺伝子群を選抜しており感度も高まり、リアルタイムでのVesicle破壊を行わなくても検出できるようになっている。トランスジェニックを作った際に毒性の有無は確認する必要があるとは思うが、超音波機器の普及がすすむこの世の中でNon-invasiveにvivoでイメージングができてさらにはコントロールもできるんじゃないかと思わせられる分野である。

 

昨日はこのnon-invasive imagingに使用するためのレポーター遺伝子開発に関するレビューを読んでいた「Farhadi, Arash, et al. “Genetically encodable materials for non-invasive biological imaging.” Nature Materials 20.5 (2021): 585-592.」超音波、MRIに加えてOptoacoustics:光音響イメージングも注目されている技術の一つであることを知った。Imaging depthが2cmと他と比べるとやや浅いが、「生体の窓」とも呼ばれる生体を透過しやすい700~900nmの近赤外光が使用され、金粒子などによって高いコントラストが実現される。レビューでは上記したGas vesicleに加えて原核生物内に存在するEncapsulinを哺乳類細胞に異種発現させる技術が述べられている。これを使うと一般的にMRIイメージングに使われたプローブのフェリチンよりさらに高いコントラストを実現する。原理は詳しくないが、コンパートメント内で局所的な鉄のミネラリゼーションを引き起こす。自然界に存在する磁気の性質を持つ最近のポテンシャルに期待である。Encapsulinは光吸収性などの物理的特性を持つように設計することもできるため、Optoacoustic imagingにも利用することができる。光音響イメージングにおいて強い信号を発生できる物質としてメラニンがある。人の皮膚においてはメラニンは膜に包まれたメラノソームという形で存在することによって細胞毒性を回避している。チューリッヒ工科大の研究室ではこのメラノソームを操作したデザイナーズメラノソームを用いてより高感度のOptoacoustic imagingを目指している。あるシグナルに応答してメラノソームが凝集するようなシステムを作り、GPCRの活性を評価できる系を構築している。(Lauri, A. et al. Whole-cell photoacoustic sensor based on pigment relocalization. ACS Sens. 4, 603–612 (2019).)

 

これら非侵略的なイメージング技術の最終到達点は細胞内外シグナルや機能レベルを検出することにある。Gas vesicleやEncapsulinなどがどれくらいの細胞機能に影響を与えるのかなど、調べる必要があることは多々あると思われる。また、超音波を初めとする機器の向上も求められる。現状で既に1マイクロ四方レベルで局所的に超音波をかけて熱を発生させるなどは可能なようで、これらの精度、能力の向上が解像度上昇にそのまま繋がると思う。Vesicleを超音波によって振動させ、BBBを広げる技術なども開発されており(Szablowski, J.O., Lee-Gosselin, A., Lue, B., Malounda, D., and Shapiro, M.G. (2018). Acoustically targeted chemogenetics for the non-invasive control of neural circuits. Nat. Biomed. Eng. 2, 475–484.)AAVと超音波などを組み合わせて遺伝子制御・治療を行うことも可能になるはずである。

 

 

 

 

 

 

超音波で触れずにあらゆるものを見る・操れる、という考えはどこかサイコパス感あるのかもしれないが、あらゆる症例や個体現象はそのプロセスを見ることが重要である。筋の良いアプローチにDNAイベントレコーディングなどもあるが、それと並んで、ダイレクトに全てを見るというアプローチに僕はめちゃくちゃワクワクする。

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